この記事は一般的な健康情報です。噛みにくさ、飲み込みにくさ、歯や顎の痛みがあるときは、自己流で続けずに歯科医師や医師に相談してください。
結論:よく噛んで食べる方法は「年代と噛む力」で選ぶ
| 主な対象 | 目的 | まずやること | 避けたいこと |
|---|---|---|---|
| 65歳未満が中心 | 早食い・食べ過ぎの対策 | ひと口を小さくし、20分以上かけて食べる | 回数を数えるのに疲れてやめてしまう |
| 65歳以上が中心 | 噛む力の維持と窒息の予防 | OF-5で口の状態を確かめ、気になれば歯科へ | 硬いものを無理に噛み続ける |
※65歳という区切りは、わかりやすくするためにこの記事で置いた目安です。年齢より、いまの口の状態を優先してください。
- 診断チャートで、自分のタイプ(A〜D)を確かめる
- タイプに合った方針を選ぶ
- 7日間チェックリストで、回数を数えずに実践する
- 気になる症状があれば、歯科や医療機関に相談する
よく噛むとは?噛ミング30と噛む回数の目安

噛ミング30とは
よく噛む効果は?研究でわかっていること
- 体重との関係:厚生労働省のe-ヘルスネット(2020年)によると、愛知県で4,742人を調べた結果、速く食べる人ほど現在のBMIが高く、20歳からのBMIの増え方も大きい傾向がありました。エネルギー摂取量などで調整しても、この差は有意だったとされています。
- 肥満になる割合:岡山大学(2014年)によると、早食いの大学生は、そうでない学生より3年間で肥満になる割合が4.4倍でした。
- 食後の消費エネルギー:東京工業大学(2014年)によると、300kcalの食品をよく噛んで食べると、急いで食べたときより食後90分間のエネルギー消費が有意に高くなりました。体重60kg・1日3食と仮定した試算では、1年間で約11,000kcal(脂肪約1.5kg分)の差になるそうです。
東京工業大学の年間の数字は、実験結果をもとにした試算です。だれでも1年で1.5kg減る、という意味ではありません。
噛む回数の目安は?30回が合わない人もいる
| 対象 | 基準にした群 | 結果(オッズ比) | 読み取れること | この記事で勧める行動 |
|---|---|---|---|---|
| 成人男性・24回以下 | 25〜30回 | 内臓脂肪蓄積 4.69 | 噛む回数が少なすぎる人は注意が必要 | 食事時間とひと口の量を整える |
| 成人男性・31回以上 | 25〜30回 | 内臓脂肪蓄積 4.83/肥満 7.02 | たくさん噛めばよい、とは言い切れない | 回数より、食べる量や速さを見直す |
| 高齢男性・31回以上 | 30回以下 | やせ 9.45 | 噛む力の衰えが隠れている可能性がある | 歯科で噛む力を確かめる |
この調査はある一時点の状態を調べたもので、男性の結果が中心です。噛む回数が原因なのか、体格や口の状態が回数に影響しているのかは、この結果だけでは分かりません。
国の統計で見る「噛む」の現状
| 指標(出典・年) | 割合 | 帯グラフ(1マス=10%・四捨五入) |
|---|---|---|
| 何でも噛んで食べられる人・20歳以上(令和6年国民健康・栄養調査) | 85.9% | ■■■■■■■■■□ |
| 何でも噛んで食べられる人・70歳以上男性(同) | 72.9% | ■■■■■■■□□□ |
| 何でも噛んで食べられる人・70歳以上女性(同) | 71.5% | ■■■■■■■□□□ |
| ゆっくりよく噛んで食べる人(第5次食育推進基本計画・令和7年度) | 46.2% | ■■■■■□□□□□ |
| 同・国の目標(令和12年度まで) | 55%以上 | ■■■■■■□□□□ |
始める前の準備:あなたに合う噛み方を診断する
準備するもの
- 時計やスマホのタイマー(食事時間を測る)
- 箸置き(ひと口ごとに箸を置く)
- この記事の7日間チェックリスト(紙に写すか、スマホのメモで十分です)
OF-5で口の状態をセルフチェック
- 残っている歯の数が減ってきた
- 噛みにくくなった
- 飲み込みにくくなった
- 口が乾きやすい
- 滑舌が悪くなった(言葉がはっきりしにくい)
※各項目の正式な判定方法は、3学会合同ステートメントや歯科医院で確認してください。
「あなたに合う噛み方」診断チャート
- Q1 年齢は65歳以上ですか?
- いいえ → Q3へ
- はい → Q2へ
- Q2 OF-5の5項目のうち、2つ以上当てはまりますか?
- はい → タイプC(「飲み込みにくさ」も当てはまれば タイプD の注意点もあわせて確認)
- いいえ → Q3へ
- Q3 食事時間が10分未満、または人と比べて食べるのが速いですか?
- はい → タイプA
- いいえ → タイプB
タイプ別の方針
| タイプ | 方針 | 根拠にした情報 |
|---|---|---|
| A 早食い改善型 | 回数より、食事時間とひと口の量を整える | 厚生労働省 e-ヘルスネット(2020年)、岡山大学(2014年) |
| B 現状維持型 | いまの食べ方を続け、最初のひと口の回数をときどき確かめる | 厚生労働科学研究・上越市調査(2010年) |
| C オーラルフレイル予備群 | 硬いものを無理に噛まず、歯科を受診して食べ物の形を調整する | 3学会合同ステートメント(2024年) |
| D 窒息注意型 | 餅やパンは小さく切り、食べるときの姿勢に気をつける。とろみなどは専門職に相談する | 消費者庁の注意喚起(2024年) |
早食いの治し方:よく噛んで食べる方法を7ステップで解説
7つのステップ
- ひと口を箸先の1/3くらいにする:口に入る量が減ると、飲み込むまでの時間が自然と延びます。
- ひと口ごとに箸を置く:口の中が空になるまで、次のひと口を取らないための合図にします。
- 汁物やお茶で流し込まない:飲み物は、口の中のものを飲み込んでから飲むようにします。
- 根菜・きのこ・こんにゃくなどを1品入れる:噛みごたえのある料理が1つあると、食事全体のペースが落ちやすくなります。
- 具材を大きめに切る:細かく刻むより、噛む回数が増えやすいとされています。
- 食事時間を20分以上にする:タイマーを置くと、時間を意識しやすくなります。
- 最初のひと口だけ回数を数える:毎回数えるのは大変なので、1食につき1回だけ数えます。
20分は、この記事で採用した続けやすい目安で、決まった正解があるわけではありません。まずはいまより5分長くするところから始めてもよいでしょう。
回数を数えない「7日間チェックリスト」
| 実践項目 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ①ひと口を箸先1/3程度にする | |||||||
| ②ひと口ごとに箸を置く | |||||||
| ③汁物・お茶で流し込まない | |||||||
| ④根菜・きのこ・こんにゃくなどを1品入れる | |||||||
| ⑤具材を大きめに切る | |||||||
| ⑥食事時間を20分以上にする | |||||||
| ⑦最初のひと口で飲み込むまでの回数(記入) | 回 | 回 | 回 | 回 | 回 | 回 | 回 |
| その日の○の数 |
- 35点以上:習慣になりつつあります。いまのやり方を続けましょう。
- 20〜34点:半分ほどできています。○が少ない項目を1つ選び、次の週に重点的に取り組みます。
- 19点以下:項目を2つに絞って、もう一度始めてみましょう。
最初のひと口の回数で、自分の位置を確かめる
| 最初に飲み込むまでの回数 | 上越市調査での位置づけ | 考え方の例 |
|---|---|---|
| 24回以下 | 成人男性では、内臓脂肪蓄積のオッズ比が高かった群 | ステップ①②⑥を優先する |
| 25〜30回 | 成人男性で基準にした群 | いまのペースを保つ |
| 31回以上 | 成人男性では肥満、高齢男性ではやせのオッズ比が高かった群 | 量や速さも見直す。噛みにくさがあれば歯科へ |
上越市調査では煎餅を使って回数を測っています。ごはんや肉など別の食べ物では回数が変わるため、あくまで「おおまかな位置」として見てください。
続かない・数えられない…つまずきやすいポイントと対処法
| つまずき | よくある原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 回数を数えるのが面倒 | 毎回数えようとしている | 最初のひと口だけ数える(⑦) |
| 昼休みが短く、時間がない | 食事に10分ほどしか取れない | ひと口の量と箸置きだけに絞る |
| 外食やコンビニに噛みごたえのある料理がない | やわらかいメニューが中心になっている | サラダや具だくさんの汁物を1品足す |
| 家族より先に食べ終わってしまう | 会話が少なく、黙々と食べている | 話すときは箸を置く、をルールにする |
| つい汁物で流し込む | 口の中が乾きやすい | 飲み込んでから飲む。乾きが続くならOF-5も確認する |
1週間で崩れたら、項目を2つに絞る
結果を体重だけで判断しない
効率化・応用のコツ:よく噛む食べ物と献立の工夫
よく噛む食べ物の例
| 食材 | 取り入れ方の例 | 気をつけたい人 |
|---|---|---|
| ごぼう・れんこん | きんぴらや煮物を大きめの乱切りで | 噛みにくさがある方は薄めに切る |
| きのこ類 | 炒め物や汁物の具に、大きめのまま | 特になし(よく噛んでから飲み込む) |
| こんにゃく | 煮物に、ちぎらず厚めに切って | 飲み込みにくさがある方は小さく切る |
| 切り干し大根 | 煮物やサラダに | 特になし |
| 大豆・枝豆 | 五目豆やサラダのトッピングに | 高齢の方はむせに注意する |
| 厚切りの肉 | 薄切りの代わりに厚めのものを選ぶ | 噛む力が弱い方は無理をしない |
献立と食べる環境の工夫
- 主菜か副菜のどちらかを噛みごたえのある料理にする:全部を硬くする必要はありません。1食に1品で十分です。
- ごはんに雑穀や玄米を混ぜる:噛む回数を増やしやすい工夫としてよく紹介されています。
- テレビやスマホを見ながら食べない:食べるペースに意識を向けやすくなります。
- 家族で取り組む:ひとりだけで取り組むより、食べるペースをそろえやすくなります。
職場・外食での応用
噛みごたえのある食材を増やす工夫は、若い世代や噛む力に問題のない方向けです。タイプC・Dの方は、次の「注意点・リスク」を先に読んでください。
注意点・リスク:高齢の方は「噛む」より安全を優先
高齢期は目的が「早食い対策」から「安全」に変わる
窒息を防ぐための注意
- 餅やパンなど、のどにくっつきやすいものは小さく切る
- 食べる前に、お茶や汁物で口を湿らせる
- 背すじを伸ばした姿勢で、ひと口ずつ食べる
- できれば、家族などがそばにいるときに食べる
歯科や医療機関に相談したい目安
- OF-5で2つ以上当てはまる
- 食事中にむせることが増えた
- 体重が意図せず減ってきた
- 入れ歯が合わない、または歯や歯ぐきが痛む
- 飲み込んだあとも、のどに残る感じがある
むせ・飲み込みにくさ・体重減少がある場合は、自己判断で噛む練習を続けず、歯科医師や医師に相談してください。食べ物のやわらかさやとろみの調整も、専門職と相談しながら決めるようにしましょう。
具体例・ケーススタディ:タイプ別の取り組み方
以下は取材や実測ではなく、この記事の診断チャートを当てはめた想定例です。効果を保証するものではありません。
ケース1:40代・昼食5分の会社員(タイプA)
- 状況:昼休みに、丼ものを5分ほどで食べることが多い
- 取り組み:②箸を置く、⑥20分以上かける、の2つに絞る。週に何回か、丼を定食に変える
- 確認:週ごとにチェック表の点数と、最初のひと口の回数を記録する
ケース2:50代・特に困りごとがない人(タイプB)
- 状況:食事時間は20分ほどで、噛みにくさもない
- 取り組み:いまの食べ方を続け、月に1回ほど最初のひと口の回数を確かめる
- 確認:定期的な歯科健診で、歯や歯ぐきの状態を診てもらう
ケース3:70代・噛みにくさと口の乾きがある人(タイプC)
- 状況:OF-5で「噛みにくさ」「口の乾き」の2つが当てはまる
- 取り組み:硬い食材を増やさず、まず歯科を受診する。食べ物は小さめ・やわらかめに調整する
- 確認:むせが出てきたら、タイプDの注意点も取り入れる
まとめ:回数より「自分に合う形」で続けよう
よくある質問
Q1. 噛む回数の目安は何回ですか?
Q2. よく噛むと痩せますか?
Q3. 早食いを治すには、まず何から始めればいいですか?
Q4. 高齢の親にも「30回噛んで」と勧めていいですか?
Q5. 噛む力が落ちているか、自分で確かめる方法はありますか?
この記事は一般的な情報の提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。体調や口の状態に不安がある方は、歯科医師・医師などの専門家に相談してください。




